ユニバーサルデザイン

 

 

 最近、歳のせいで力が弱くなったのだろうか、キャップが開けにくくなりました。細口ボトル型のアルミ缶の飲料は、開けるのに苦労します。ユーザー無視なの か、それとも嫌がらせなのかと思うほどです。すぐに開いてしまうと品質保証上で問題があるのでしょうが、まずはユーザービリティ。多くのメーカーは未だに、自分に責任が及ばないように、生産・コストの都合、更にはデザイン優先などで商品を作っています。

 まだ許せるのは、「R25」(リク ルート社発行のフリーペーパー)の文字の大きさです。私にとっては、小さすぎて読むのに苦労します。一般の印刷物よりも小さいのです。私の納得(諦め) は、対象年代が限定されているからです。RはRestrict(制限)の意味をもち、25~34才のサラリーマン男性専用が編集コンセプトだからです。

 ところが、幅広い年代の人に使ってもらうにもかかわらず、幅広い年代の人からみた設計がされていない商品が未だに多く出回っています。理由は簡単です。まずは、「ユニバーサルデザイン」「バリアフリー」などに無知であること。これは、プロとして失格です。

 次に大きい理由は、自分の身で理解し得ないことです。文字の大きさにしろ、キャップを開ける力(トルク)にしろ、自分にとっては問題ないのです。分かろうとしても、実感が伴わないから、加減のしようがありません。そしてその内、意識の外に。

 そして一番の理由は、仕組みを変えるのが大変だし、まだ大丈夫と思っていることです。

 これまでの設計基準は、消費市場の中心であった20~40代を意識したものでした。それに合わせて全て作られてきたのです。設計しかり、生産設備対応しかりです。 

 しかし、いつまでそんな悠長なことを言っているのでしょうか。このように「不便」「不自由」な商品を送り出すことは、メーカー自身が意識している、していな いにかかわらず、「R指定」をしていることなのです。「使えない人は、使わないでいい」と言っているのと同じであり、顧客を選別しているのです。高齢化社会を間近にして、そんな商品は、顧客の方から拒絶(R指定)されてしまいます。団塊の世代に代表されるこれからの高齢者は、我慢して使ってはくれません。
 
 環境に適合できない生物は絶滅しました。反対に、したたかにでも環境の変化に対応してきた生物のみが、今も残っていることを知るべきです。そのためには、常識化してきたモノづくりの仕組みを根底から変える必要があります。改良ではありません。あるべき姿を作り上げ、そこから発想した仕組みづくりです。

 『世界がもし100人の村だったら』の本ではありませんが、「お客さんの60人、70人が高齢者だったら」と考えてください。市場規模にするともっと凄いことになります。

 10 年後、どこの会社のどんな商品が残っているのでしょうか。マーケティングをやっていてチョッと先を読むのは難しいのですが、人口変動による社会構造の変化 は十分に予測可能なのです。であるのに、なぜやらないの? 既に始めている会社もあります。遅れをとらないようにしなくては。

 まだいいのだと考えたとしても、仕組み作りに向けた研究だけは早くしてみたらいかがでしょうか。

 商品、サービス、チャネル、宣伝(コミュニケーション)、生産、物流・・・・・法規制・・・・