生物に学ぶ設計

   

   

企画立案や仕様設計をする時、参考になるのが「生物」です。

 

理由は、そこに「必然」があるからです。身体の形や機能には、その生物が辿ってきた環境適応の結果が表れています。身体のひとつひとつのパーツに意味がある筈。100%と言っても良い程、必然的な理由があるのです。

 

商品を設計する時も、そのことはヒントになります。商品が存在すること自体に、それぞれ目的や意味があると考えられるからです。

 

商品のデザインは、企画コンセプトをベースにして色や形、質感などが決められます。しかしそのあとは、生産の都合とか、開発マニュアルどおりの設計で仕上げ ようとすることがあります。それぞれの商品には、それぞれ想定するユーザーがいて、売られ方、買われ方があり、それぞれのあり方が違うのにです。

 

マニュアルは、新人が仕事の進め方を知る上で必要なツールです。しかし、商品はそれぞれ個性をもっていると言うことを忘れてはいけません。早くマニュアルを卒業し、プロフェッショナルに。商品の個性が活きる商品を創ってください。

 

基本は、ユーザーが使い易いこと。自然な動作で無理なく使えることが必要なのです。箱から容器を取り出す時、どこから開けますか? 正面、上面、デザインに よっては横から開けるのが普通です。ですから、そこから開け易い設計がモノづくりの作法とも言えます。「人間工学」を超えた「ヒューマンタッチ」が必要な のです。時々、裏面や底面からの方が開けやすい包装を見かけます。

 

表示も同じです。何を伝えたいかではなく、ユーザーが知りたいのは何かを優先した表示が必要です。文字の大きさや色、レイアウトなどです。文字量も重要です。多すぎると読む気になりません。私にとって、カップラーメンでは、「何分」の表示が一番重要です。老眼になると他の文字は読めません(読みません)。

 

デザインができたら、試作品を作り、自分で確認してみてください。使いにくさ、見にくさ、不自然さはないだろうか? 人まかせではいけません。商品設計の最終責任者は企画担当者なのを忘れないでください。

 

 

もうひとつ、「生物」発想があります。

それは、「進化」と「リニューアル」の関係。ブランドや商品は時代と共に、バージョンアップや新装によるリニューアルが行われます。リニューアルの意味を考えていて気が付いたのが、「進化」でした。単に新しくだけではないのです。

 

生物は、太古の時代から進化を続けてきました。「進化」の背景にあるのは、環境適応なのです。その時々に環境に適応できるように、自らの姿かたち、機能を変化させてきたのです。もちろん、それに失敗した種は絶滅しました。そこにも、「必然」と思ったのです。

 

難しいのがタイミング。環境変化が緩やかな時はいいのですが、最近のように急激に、かつドラスティックに変化する時の対応です。その変化をどのように察知するか、どの程度の適応が必要なのかが重要です。適応のための進化の度合いをためらってはいけません。変化を甘く見ていると、致命傷になりかねません。必要とあれば思い切った進化をしなくてはならないのです。

 

ですから、自分が担当する商品が環境適応できているかを、常に見ていなくてはいけません。その見方についても、注意する点があります。自分(商品)都合では いけないのです。あくまでも環境への適応が優先でなければいけないのです。すなわち、「どこに向かうのか」を決め、そこでの「あるべき姿」をきちんと認識 することが大事なのです。難しいのは、どこに向かうのを決めることかも知れませんが。

 

このような「生物」発想は、何がしかの真理がそこにあるから重要なのです。きっと、企画や設計で悩んだ時、何らかの方向性を示してくれるでしょう。

 

 

最近、こんな言葉を見つけました。

 *生体工学(バイオミメティック)