能書きの力   

 

 

  「能書き」とは、薬などの効能を書き記した文書。すなわち、効能書き。ここまでであれば、普通のこと。でも、この「能書き」は、それ以上の効果を持っているのです。いわゆる、「プラシーボ効果」。ただの小麦粉を良く効く頭痛薬と言われて飲むと頭痛が治ってしまうという一種の暗示効果のことです。

 人に害を与えるような使い方は良くありませんが、商品の価値を高めるのに有効なのです。もちろん、ユーザーにとって。

「おもいっきりテレビ」でみのさんが言っただけで、その日の店頭から消えると言われます。それは、みのさんの能書きが効いているのです。薀蓄(うんちく)てんこ盛りのお菓子やお酒も同じ。知らずに食べたり飲んだりした時は何にも感じなかったものが、「美味しい理由」をインプットされると、そのつもりになって 味わいます。インプットした情報の暗示効果と、頭で味わうことで、何故か美味しく感じるのです。

 何も情報もなく、そのモノ自体の価値を判 断、評価できる人は少ないと思います。以前、「一流の芸能人」というのをTVでやっていました。数十万円するワインと1000円位のワインを目隠しで比べるというのですが、あまり当たりません。でも、一流のレストランで、ソムリエの説明を聞いた後に飲むと、「さすが、美味しい」などと言ってしまうのにで す。

 果たして、どちらのワインが本当に価値があり、美味しいのかは分かりません。中には、分かる人もいるかと思いますが、普通の人には分からないのです。そんな普通の人にとって意味をもつのは、「いかに美味しく飲めるのか」です。

 そこで登場してくるのが「能書き」。ある種の味付けかもしれません。ゴルフクラブでも、化粧品でも、絵画でも、温泉でも、そんな「能書き」がモノとして元々 もっている価値以上の効果を生み出し、高めてくれています。ですから、「能書き」もその商品・サービスのスペック(部品)であり、おろそかにしてはいけないものなのです。

よくあることですが、「能書き」ではなく、「説明(書)」で済ませているものを見かけます。それは、「商品」「商品価 値」をわかっていないのだと思います。いいものを作れば良いのではなく、そんないいものが生み出された背景や物語、それによって生み出されるであろう価値 も伝える必要があるのではないでしょうか。

 

 商品企画、コンセプターの仕事は、いかに魅力的な「能書き」が作れるかにあるように思います。 折角の商品・サービスが「能書き」次第で売れたり、売れなかったりするのでは、もったいないと思いませんか。不遜と言われるかもしれませんが、「能書き」 だけでも価値を作れる位の気持ちをもってはいかがですか。

 新製品のゴルフボールを買ったときには、ケースに書いてある能書きを読むようにします。「よく飛ぶ」「曲がらない」と自分に暗示をかけているのですが、中々、効果が出ないのは、何故でしょう。この場合には、プレイヤーの腕もスペックのひとつなのかも知れませんね。